環境への取組み
運用物件の環境性能の向上という社会的使命に応え、エネルギー消費、GHG排出、水消費、廃棄物排出など運用物件が環境へ与える影響の継続的削減や有害物質の削減・適切な管理を通じて環境負荷を低減し、環境面での持続可能性に貢献することが、中長期的な利益の向上に寄与すると考え、以下のような環境への取り組みを積極的に行っています。
気候変動
気候変動の主な要因となる地球温暖化は、これまでも重要な環境課題として議論がなされてきており、近年では1997年に採択された京都議定書以来18年振りの国際的な気候変動関連の枠組みとなる「パリ協定」が2015年のCOP21において採択されています。「パリ協定」においては、世界の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をすることが主な目的として掲げられました。また、2021年のCOP26においては、グラスゴー気候合意として世界の平均気温の上昇を1.5℃に抑える努力を追求することが確認されました。昨今の異常気象の増加等に鑑みますと、このような気候変動への取組みは当社及び運用する投資法人の事業活動や運用物件にとっても重要な課題であると認識しています。
TCFD提言への賛同
本資産運用会社は、2021年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明するとともに、国内賛同企業による組織である「TCFD コンソーシアム」へ加入しました。
TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)とは、G20 の要請を受け、金融安定理事会(FSB)により、気候関連の情報開示及び金融機関の対応をどのように行うかを検討するために設立された国際イニシアチブです。TCFD は、企業等に対し、気候変動関連リスク及び機会に関する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」について開示することを推奨する提言を公表しています。また、TCFD コンソーシアムとは、TCFD 賛同企業や金融機関等が一体となって取組みを推進し、企業の効果的な情報開示や、開示された情報を金融機関等の適切な投資判断に繋げるための取組みについて議論することを目的として設立された組織です。
当社では、TCFD に基づく情報開示の拡充に取組み、引き続き ESG への取組みを積極的に推進していきます。
ガバナンス
気候変動に関するガバナンス体制の詳細については、サステナビリティ等推進体制をご参照ください。
戦略
シナリオ分析の実施
本資産運用会社では、気候変動が現在から中長期にわたって本資産運用会社及び運用する投資法人に与えうるリスク及び機会を把握し、それらについて未然に検討・対応していくために、複数の世界観をもとにしたシナリオ分析を実施しました。各シナリオの概要は下記のとおりです。なお、本分析においては、国際機関等が公表している将来的な気候予測やエネルギー動向のシナリオ等を参照のうえ検討を実施しました。
4℃シナリオの世界観
1.5℃シナリオの世界観
移行リスク | 物理リスク | |
4℃シナリオ | IEA(国際エネルギー機関) World Energy Outlook 2020 STEPS | IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル) 第5次報告書 RCP8.5 |
1.5℃シナリオ | IEA(国際エネルギー機関) NZE2050 | IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル) 第5次報告書 RCP2.6 |
シナリオ分析に基づく財務的影響
本資産運用会社が運用する投資法人において想定されるリスク及び機会、並びに財務的影響について、前述した4℃及び1.5℃シナリオの世界観毎に、中期的(2030年)及び長期的(2050年)な影響を検討しました。検討結果の概要は次のとおりです。
リスク・機会 | 財務的影響 | リスクへの対応策・機会への取組施策 | |||||||||||
中 分 類 | 要因 | 4℃ シナリオ | 1.5℃ シナリオ | ||||||||||
中期 | 長期 | 中期 | 長期 | ||||||||||
移 行 リ ス ク ・ 機 会 | 政 策 ・ 法 規 制 | CO2排出量規制 国際的な枠組みへ対応するための施策としてCO2排出量の規制が生じ、CO2排出に関するコスト・リスクが発生する。 | 既存物件の省エネ化のためのコスト増加 | 小 | 小 | 小 | 中 | 既存物件の省エネ化 GHG削減目標の設定 | |||||
炭素税負担 国際的な枠組みへ対応するための施策として炭素税の導入が生じ、CO2排出に関するコスト・リスクが発生する。 | 炭素税のコスト増加 | 小 | 小 | 中 | 大 | 再生可能エネルギーの導入 非化石証書等の取得 | |||||||
非化石証書等の取得コスト増加 | 小 | 小 | 中 | 中 | |||||||||
技 術 | 省エネ・再エネ技術の高度化 さらなる技術発展が生じ、導入コストの低下や、より効率的な省エネ・再エネの達成が可能となる。 | 新技術導入によるコスト増加 | 小 | 小 | 小 | 中 | 既存物件の省エネ化 | ||||||
省エネ化、再エネ導入、ZEB・ZEH化等に伴う光熱費の削減 | 小 | 小 | 小 | 中 | ZEB・ZEH物件の取得 既存物件のZEB・ZEH化 | ||||||||
市 場 | 投資家・金融機関の評価 投資家やレンダーは、運用物件の環境パフォーマンス向上を重視するようになる。 | 低評価による資金調達コストの増加 | 小 | 小 | 小 | 小 | 既存物件の省エネ化 環境認証の取得 投資家・金融機関とのエンゲージメントの強化 グリーンファイナンスの活用 | ||||||
高評価による資金調達コストの低下 | 小 | 小 | 小 | 小 | |||||||||
環境認証の重視 投資家・金融機関のポートフォリオ評価やテナントの物件選定にあたり、環境認証の取得が要求される。 | 評価向上のための対応コスト増加 | 小 | 小 | 小 | 小 | 環境認証の取得 | |||||||
環境認証の取得コスト増加 | 小 | 小 | 小 | 小 | |||||||||
評 判 | 環境志向によるテナントの行動変容 規制対応や志向の変化等から、物件の環境パフォーマンスが重視される。 | 環境パフォーマンスの低い物件の座礁資産化 | 小 | 小 | 中 | 中 | 既存物件の省エネ化 環境認証の取得 テナントとのエンゲージメントの強化 | ||||||
環境パフォーマンス向上による入居率の維持向上 | 小 | 小 | 中 | 中 | |||||||||
防災志向によるテナントの行動変容 気温上昇や海面上昇に起因する災害の増加から、物件の防災面が重視される。 | レジリエンスの低い物件の座礁資産化 | 中 | 中 | 小 | 小 | 取得時デューディリジェンス 運用物件の浸水リスク分析 レジリエンスの向上 テナントとのエンゲージメントの強化 | |||||||
レジリエンス対応による入居率の維持向上 | 中 | 中 | 小 | 小 | |||||||||
物 理 リ ス ク ・ 機 会 | 急 性 | 風水害の激甚化 風水害の激甚化により物件が損害を被る頻度が上昇する。 | 災害からの復旧コスト増加 | 中 | 中 | 小 | 小 | ||||||
復旧期間における賃料収入の減少 | 中 | 中 | 小 | 小 | |||||||||
慢 性 | 海面の上昇 慢性的に海面が上昇する。 | 海面上昇への対応コスト増加 | 小 | 小 | 小 | 小 | |||||||
平均気温の上昇 慢性的に平均気温が上昇する。 | 夏場の光熱費の増加 | 小 | 小 | 小 | 小 | 既存物件の省エネ化 |
リスク管理
気候変動に係るリスク管理体制
当社及び運用する投資法人のサステナビリティ・ESGに関するリスクについては、当社の各リート本部及びサステナビリティ推進委員会において識別し評価されます。これらのサステナビリティ・ESGに関するリスクについては各所管部署において日常的に管理されるとともに、重要なリスクについてはサステナビリティ推進最高責任者のもとサステナビリティ推進委員会において定期的に分析及び検討のうえ適切に管理されるとともに、必要に応じて関係者と共有することにより組織全体のリスク管理に組み込まれます。
指標と目標(KDX不動産投資法人)
気候変動に係る指標と目標
気候変動への対応は重要な社会的課題の一つであり、国内外での気候変動対策への取組みが加速する中、KDX不動産投資法人においても、保有資産におけるGHG排出量の中長期的な削減を通じて、環境負荷の低減を積極的に推し進め、環境面での持続可能性に貢献するべく、以下のとおり、GHG排出量の削減目標を設定しています。
GHG排出量削減目標(注1) | 2030年度 | 2050年まで |
---|---|---|
総量:42%削減(2022年度対比) 原単位:42%削減(2022年度対比)(注2) | ネットゼロ | |
対象:スコープ1及びスコープ2 | 対象:スコープ1、スコープ2 及びスコープ3 |
各年度のGHG排出量については、同一条件で比較できるデータの取得が可能な物件のみを集計対象とし、環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」における電気事業者別排出係数(調整後排出係数)を用いて本資産運用会社にて試算しています。
スコープ1:燃料の燃焼による直接排出分
スコープ2:外部から調達した電力・熱使用による間接排出分
スコープ3:排出総量からスコープ1及びスコープ2を除いた排出分
(注2)
原単位については、各年度のGHG排出量(スコープ1及び2)を各保有物件の延床面積で除して算出しています。
KDX不動産投資法人は、上記のGHG排出量削減目標について、Science Based Targets(SBT)認定を取得しています。
Science Based Targets(SBT)認定の詳細については、賛同するイニシアティブ・外部評価をご参照ください。
KDX不動産投資法人では、エネルギー消費量等について以下のとおり、削減目標(中長期目標)を定めています。
エネルギー消費量削減目標 | ポートフォリオ全体において、エネルギーの使用の合理化等に関する法律(以下「省エネ法」といいます。)に則り、直近5年間において、年平均1%以上の法準拠エネルギー消費原単位の削減を目指す 温暖化対策関連の地方条例の対象となる物件は、個別に目標設定 |
---|
サステナビリティに係る推進体制/PDCAサイクル
GHG排出量、エネルギー消費量等の削減に係る中長期目標を達成していくために、以下のようなPDCAサイクルを定め、定期的に開催される「サステナビリティ推進委員会」において、エネルギー消費量等実績の進捗管理や消費量増減のための原因把握等を行っています。
環境パフォーマンス(KDX不動産投資法人)
GHG排出量の推移
2022年度(基準年) | |
---|---|
GHG排出量(t-CO2)(注1) | 100,349 |
スコープ1 | 1,592 |
スコープ2 | 40,036 |
スコープ3(カテゴリー13) | 48,720 |
原単位(t-CO2/m²)(注2) | 0.055 |
排出量削減率(%) | – |
原単位削減率(%) | – |
各年度のGHG排出量については、同一条件で比較できるデータの取得が可能な物件のみを集計対象とし、環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」における電気事業者別排出係数(調整後排出係数)を用いて当社にて試算しています。
スコープ1:燃料の燃焼による直接排出分
スコープ2:外部から調達した電力・熱使用による間接排出分
スコープ3:排出総量からスコープ1及びスコープ2を除いた排出分
(注2)
原単位については、各年度のGHG排出量(スコープ1及び2)を各保有物件の延床面積で除して算出しています。
エネルギー消費量及び水消費量の推移
2022年度 | |
---|---|
エネルギー消費量(MWh) | 472,800 |
原単位(MWh/m²)(注) | 0.240 |
水消費量(m³) | 2,502,296 |
原単位(m³/m²)(注) | 1.273 |
独立第三者の保証報告書
2022年度のGHG排出量及びエネルギー及び水消費量については、第三者機関(サステナビリティ会計事務所)による保証を受けています。
独立第三者の保証報告書(旧KDO) (266KB)
独立第三者の保証報告書(旧KDR) (266KB)
独立第三者の保証報告書(旧KRR) (266KB)
環境負荷低減への取組み事例
各種照明器具のLED化
保有物件の共用部・貸室等の一般的な照明器具及び非常用照明器具(誘導灯や非常灯)をLED化することにより、電気消費量の削減を積極的に推進しています。
太陽光パネルの設置
保有物件に太陽光パネルを設置し、発電した電力を自家消費(天理配送センターにおいては外部へ売電)することでGHG排出量を軽減しています。
発電量 | |
---|---|
ウニクス伊奈 | 307,655 kWh |
かわまち矢作モール | 292,328 kWh |
アピタテラス横浜綱島 | 27,986 kWh |
天理配送センター | 144,756 kWh |
もねの里モール | 494,663 kWh |
ゆめまち習志野台モール | 264,818 kWh |
緑化の推進
エントランスへの植栽設置といった取組みから敷地内緑化や屋上緑化まで、様々な緑化の推進にも取り組んでいます。特に商業施設における屋上緑化では、熱環境改善等の物理的な環境改善効果に加え、保有物件の利用者への癒し効果を促し、憩いの場を提供しています。
節水への取組み
保有物件おいて節水機能付きトイレの導入、雨水タンクの設置を行うことで水使用量の削減に取り組んでいます。
ロードヒーティングの遠隔監視
札幌所在の居住用施設4物件において、ロードヒーティング(融雪設備)の遠隔監視システムを導入しています。システムを導入した結果、融雪のための燃料コストが大幅に削減されました。
宅配ボックスの設置
宅配ボックスの設置により、荷物の再配達を減らし、運搬時のGHG削減やドライバーの労働損失の削減に貢献しました。
ステークホルダーとの環境面における協働の取組み
本資産運用会社及び運用する投資法人は運用物件の環境性能の向上等を通じて持続可能な環境への貢献に取り組んでいますが、日常的に物件を利用されるテナントの皆様のご理解とご協力も重要であると考えています。本資産運用会社及び当社が運用する投資法人はテナントへの啓発活動やグリーンリースへの切り替えの働きかけ等を通じて、持続可能な環境社会のための協働を目指しています。
本資産運用会社及び当社が運用する投資法人は「環境のためのテナントとの協働」をマテリアリティ(重要課題)の一つとして捉え、ステークホルダーであるテナントとの協働をより積極的に推進すると共に、実際に物件管理を行うプロパティ・マネジメント会社や物件運用を担う本資産運用会社の社員といった各ステークホルダーとも連携も図りながら、環境面での持続可能性に貢献します。
有害物質や⼟壌汚染等への適切な対応
ケネディクスグループでは、物件取得等にあたりエンジニアリング・レポート(建築物、設備等及び環境の専⾨的知識を有する者が⾏った不動産の状況に関する調査報告書)や地震PML 評価の取得、⼟壌汚染調査等を実施し、物件の法的適合性等を確認しています。
エンジニアリング・レポートではアスベスト、PCB、フロン類といった有害物質の有無についても確認を⾏い、その存在が確認された場合は、それぞれ法令に則って適切な対策・管理・処理等の対応を実施しています。
また、⼟壌汚染調査により⼟壌汚染が確認された場合は、⼟壌改良等により汚染⼟壌を浄化したうえで物件を取得しています。
横浜コネクトスクエアにおける⼟壌汚染への対応
ケネディクスグループは、横浜みなとみらい中央地区37街区にてパートナー企業との協業体制のもと大規模開発プロジェクトを推進しています。本プロジェクトでは約10億円を拠出し、汚染土を除去し遮水壁を設ける等の土壌汚染への適切な対策を実施しています。
グリーンリース契約の締結
本資産運用会社では、一部テナントとの間でグリーンリース契約を締結し、テナント専有室内照明のLED化工事を投資法人の費用負担で実施する一方で、圧縮されたテナント負担の電気消費量及びメンテナンスコスト(蛍光灯交換費用)の低減額の一定割合をグリーンリースフィーとして当社が運用する投資法人が収受しています。
グリーンリース契約とは?
オーナーとテナントが環境負荷を低減するため協働することを盛り込んだ賃貸借契約です。
省エネ改修工事の経済メリットを双方が分かち合うことで、ビルオーナーの投資負担を軽減し、環境性能に優れた物件への改修を促す取り決めや、省エネ・節水・室内環境の改善に向けた運用改善に関する合意などがあります。
環境社会配慮条項を盛り込んだ賃貸借契約書の導入
本資産運用会社が運用する投資法人では、省エネ・環境社会配慮等の観点から、環境パフォーマンス・快適性・生産性の維持及び向上の理念を共有し、これらの施策に賃貸人・テナント相互に協力する旨の環境社会配慮条項を賃貸借契約書に盛り込むことを推進しています。
プロパティ・マネジメント会社との協働
プロパティ・マネジメント会社(PM会社)との間でサステナビリティ方針等、持続可能な環境社会への貢献に関する本資産運用会社が運用する投資法人の考えを共有し、新規に賃貸借契約書を締結する際には、PM会社を通じてテナントへも本資産運用会社が運用する投資法人の理念を説明し、省エネ等への取組みに対するテナントの協力をお願いしています。
グリーンビルディングに関する従業員教育
本資産運用会社ではグリーンビルディングに関する知識向上のため、年1回外部講師を招いて従業員向けのサステナビリティ研修を実施しています。